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2023.11.27
2023.12.01

エネルギーミックスとは?日本の現状と今後の展望

記事ライター:iedge編集部

エネルギーミックスとは

エネルギーミックスというのは、特定の発電方法に依存せず、複数の発電方法を組み合わせて行うことです。発電方法は主に次のようなものが挙げられます。

・火力発電
・原子力発電
・水力発電
・風力発電
・地熱発電
・太陽光発電
・バイオマス発電

現状では、これらのうち複数の発電方法を組み合わせて行われています。しかし、発電量の偏りがかなり大きいのが実情です。火力発電に大きく依存しており、発電量全体の8割程度を占めています。そのような状況では、エネルギーミックスが充分にできているとはいえない状態です。
東日本大震災以前までは、原子力発電が全体の3割程度を占めていたため、今ほどひどい状況ではありませんでした。火力発電の割合が大きくなったのは、東日本大震災に伴って起こった福島第一原発事故がきっかけです。他の原発も停止され、その分を火力発電で賄うようになりました。その後、再稼働された原発もありますが、わずかにとどまります。
諸外国においては、状況はさまざまです。アメリカや韓国も火力発電が多く、原子力発電は2~3割程度を占め、東日本大震災前の日本と近い状況です。
ヨーロッパの国は全体的に見て火力発電の割合はあまり高くありません。太陽光発電や風力発電などの割合が高く、エネルギーミックスが比較的進んでいます。フランスに関しては、原子力発電が3分の2程度とかなり高い割合を占めるのが特徴です。

エネルギーミックスが必要な理由

エネルギーミックスができていなくても、特に不都合はないと思ってしまう人もいるかもしれません。確かに平時であれば困ることはないでしょう。しかし、社会情勢や国際情勢の変化により、特定の発電方法が利用できなくなることもあります。
現に日本では福島第一原発事故の直後は原子力発電が行えなくなりました。もし、原子力発電に偏っていたとしたら、深刻な電力不足に陥っていたでしょう。
現状では火力発電に偏っていますが、日本はエネルギー自給率が低いため、資源価格や為替相場の影響を大きく受けます。
そのため、特定の発電方法に依存せず、エネルギーミックスを進める必要があります。

主な発電方法のメリットとデメリット

主な発電方法のメリットとデメリットについて見ていきましょう。

火力発電

火力発電は事故が起こりにくく安全性が高いのがメリットです。燃料がある限りはいつでも発電できるため平時なら安定的に供給できます。
ただし、火力発電の燃料に使われる石炭や天然ガスはほとんどを輸入に頼っています。そのため、国際情勢に左右されやすいのがデメリットです。資源価格の高騰に伴い電気代も高騰します。また、二酸化炭素を多く排出することや、資源枯渇の可能性があることもデメリットです。

原子力発電

原子力発電は、低コストで発電できて電力を安定供給できるのがメリットです。発電の際に二酸化炭素も発生しません。
その一方で大きな地震などの際に事故の危険を伴います。また、使用済み核燃料の処理が問題化しているのもデメリットです。

太陽光発電

太陽光発電は専用のパネルを設置し、太陽光をエネルギー源として発電する方法です。化石燃料を使わないため、二酸化炭素は発生しません。屋外でスペースさえあればどこにでも設置できるのもメリットです。大きな建物の屋上に設置することもあれば、一般の住宅の屋根の上などにも設置できます。
ただし、導入コストが高いのがデメリットです。また、気象条件に左右されやすいため、安定供給は難しいでしょう。

風力発電

風力発電はプロペラ型のブレードが付いている発電機を設置し、風力でブレードを回すことで発電する仕組みです。自然の風を利用するため、二酸化炭素は発生しません。
しかし、発電コストが高いのがデメリットです。また、大量の風力発電機を設置するには、広いスペースが必要になります。そのため、導入可能な場所が少ないのもデメリットです。

水力発電

水力発電は水車を回して発電する方法です。化石燃料を使用しないため、二酸化炭素は発生しません。エネルギー効率が良いのもメリットです。
しかし、水力発電所を建設するには、ダムを建設しなければなりません。そのために、小さな集落などがなくなるおそれがあります。建設コストが高いのもデメリットです。

地熱発電

地熱発電は地下深くにあるマグマなどの熱を利用して発電する方法です。日本は火山が多いため、地熱発電に適した場所が多くあります。発電に伴う排熱を再利用できることもメリットです。
しかし、地熱発電所を建設するには、高額な導入コストがかかります。また、導入場所の付近の住人が反対する可能性があるのもデメリットです。地熱発電所建設には、周辺住民と上手く調整し、折り合いをつけていかなければなりません。

バイオマス発電

バイオマス発電は、生ゴミや家畜の糞尿など、有機物をエネルギーとして活用して発電する方法です。廃棄物として捨てられるものを再利用するため、循環型社会の構築につなげられるとして注目を浴びています。
しかし、導入コストも発電コストも高いのがデメリットです。

2030年度目標

政府はエネルギーミックスを進めるために2030年度目標を掲げています。主に「S+3E」を基本方針とする内容です。
「S」は安全性(Safety)を意味するものです。「3E」は安定供給(Energy security)、経済性(Economic efficiency)、環境(Environment)を意味しています。
安全であること大前提で、安定的に低コストで環境にも配慮するという内容です。
また、「野心的な見通し」として具体的な数値目標を掲げています。
その内容は、2030年度までに再生可能エネルギーの割合を36~38%にするというものです。内訳としては太陽光14~16%、水力11%、バイオマス発電5%、風力5%、地熱1%と示されています。
もし、この「野心的な見通し」が実現すればエネルギー自給率も30%程度まで上がると見込まれています。

今後の課題と展望

現状では電力の大半を火力発電で賄っており、化石燃料への依存度が高い状況にあります。石炭と天然ガスが燃料として使われていますが、ほとんどを輸入しているため、自給率も低いのが実情です。この状況が続けば、いずれは電力の安定供給が難しくなる日も来るでしょう。
状況改善のためには再生可能エネルギーの割合を増やすのが望ましいです。しかし、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの発電は軒並みコスト面が大きなハードルとなっています。導入コストも運用コストも高額です。
そこで、次世代のエネルギー源として水素とアンモニアが注目されています。火力発電において、水素混燃焼やアンモニア混燃を行うというものです。水素やアンモニアを従来までの燃料に混ぜて使用することで、石炭や天然ガスの消費量を減らせます。これが上手くいけば「野心的な見通し」の達成も現実味を帯びてきます。さらに二酸化炭素排出量も削減可能です。
政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することも目標として掲げています。水素混燃焼やアンモニア混燃はカーボンニュートラルにも寄与できるでしょう。

まとめ

エネルギーミックスは、我々が将来にわたって安定的な電力供給を確保する上で非常に重要です。現在は火力発電に依存して何とかなっていますが、今度もこの状況が続くとは限りません。日本は資源が非常に少ないため、再生可能エネルギーをいかに活用していくかが、今後の我々の生活の鍵を握るでしょう。

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