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マーク・ザッカーバーグ はFacebookをいかにして「学生名簿」から「世界最大のSNS」に育てたのか

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※画像はイメージです

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この莫大な数字は、世界最大のSNSであるFacebookの月間アクセス数だ。

人びとの“つながり”の在りかたを大きく変えたこの企業は、さまざまな技術とともにアップデートを続けている。
そしてその技術の中には、当然、人工知能も含まれている。

Facebookの創立者であり、CEOのマーク・ザッカーバーグは、いつだって人びとの注目の的だ。
新たな技術を取り入れたり、技術についてのステートメントを出したり、はたまた新たな技術の標的になったり…と彼に関するニュースは、枚挙にいとまがない。

最先端の技術にときに救われ、ときには足を引っ張られながらも、マークは常に技術革新に希望を見出してきた。
今回は、そんな彼の軌跡を追っていく。

大学の片すみで作られた“人間の欲望を刺激する”ウェブサービス

2004年2月、大学の寮の一室で一人の青年が「ザ・フェイスブック」というサービスをローンチした。
その青年こそ、マーク・ザッカーバーグ、その人である。

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マークは1984年、ニューヨーク州のユダヤ系家庭に生まれた。父親は歯科医、母親は精神科医、兄弟は姉一人、妹二人。四人兄弟の二番目だった。

彼は、地元ニューヨーク州、ドブズフェリーの高校に進学し2年間を過ごすが、刺激を感じられず、エリートたちの集うニューハンプシャー州の進学校フィリップス・エクセター・アカデミーに転校する。
高校では数学や物理などで優秀な成績を残し、晴れてハーバード大学に進学した。
ちなみに、マークが優秀だったのは勉強だけではない。高校ではフェンシング・チームのエースでキャプテンだったし、友人と一緒に音楽再生用フリーソフトウェアを作ったこともあった。

そんなマークは大学に進学するとさまざまなサービスを作るようになった。中でも反響が大きかったのが、入学直後につくった「コースマッチ」と、物議を醸した「フェイスマッシュ」である。
コースマッチは、特定の学生がどんな講義を取っているか、あるいは逆に特定の講義をどんな学生が取っているか、を相互参照できるサービス。
講義を組むときの参考になるのはもちろん、「他者の生活を覗き見したい」という欲望からコースマッチを利用する生徒も少なくなかったという。

他方のフェイスマッシュはハーバードの学生名簿を元データに、同性である2人の写真を並べ、ユーザーが「ホット」だと思った方に投票できる。さらにこのサービスでは、一回の施行で「ホット」だと判定された人はより「ホット」だと判定された人物と対戦する、というアルゴリズムが採用されていた。フェイスマッシュは公開と同時にバイラルし、学生たちは自分の写真が出した結果に一喜一憂した。
しかし、ルッキズムに基づき、差別を助長しかねないこのサービスは、結局大学当局からストップがかかり、半日で封鎖された。

これらのサービスが炙り出した人間の欲望を刺激するシステムがFacebookに引き継がれていたことは言うまでもない。
そうして生まれた構想が「フェイスブック(学生名簿)」を使ったSNSだ。

学生名簿から着想を得たFacebookのはじまり

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当時、ハーバード大学当局もオンライン学生名簿の制作を名言していたが、プライバシーの取り扱いに対する懸念があり、なかなか実現までに至らなかった。

そこに目をつけたのがマークだ。彼はプライバシーの問題に対し、ユーザー自身に名前や写真などの情報を提供してもらう、という正攻法で戦うことにした。
ここで、名簿、としての確度を高めるため、マークは、ユーザーに実名登録を要求した。この実名主義は、この後、Facebookというサービスの根幹を支えることになる。
一連の個人情報に加え、近況を共有できる機能や恋愛対象や趣味、政治的立場など様々な項目を埋められる自己紹介欄を搭載したハーバード大の学生向けSNS「The Facebook」の完成だ。
便利なSNS機能に、ハーバード大の学生のみというステータスも合わさって、公開から一ヶ月以内にはハーバードの学部生の3/4以上がThe Facebookに登録したという。The Facebookはアイビーリーグを中心とした他大学にも横展開され、他大学でも登録者を増やしていった。

破竹の勢いのThe Facebookには様々な企業から魅力的な買収話が持ちかけられた。
しかし、マークは自身の美学に基づいて、決して首を縦に振ろうはしなかった。
その美学というのが、儲かるビジネスを作るより、面白いサービスを作ることだった。

この点に関してマークは徹底しており、The Facebookは、当初、爆発的な会員数の増加を見せていたにも関わらず、広告掲載などは一切行わず、収益は0だった。

翌年、The Facebookは、アメリカの学部生の85%が登録するサービスにまで成長した。そして、「Facebook」に名を改め、大学生の次は高校生、最後には13歳以上の全ての人にサービスは解放された。

その後の成長は知っての通りだ。

文化を作る、だからこそ統制が必要

マークはFacebookの初代社長となるショーン・パーカーにこう語ったそうだ。

『永続的な文化的影響を与えるようなサービスを建設して世界を征服しよう』

デビッド・カークパトリック(滑川 海彦、高橋 信夫 訳)『フェイスブック 若き天才の野望』

学生名簿のその先に半永久的に文化を支えて行くようなサービスを夢見たマーク。
そして世界的で文化的なサービスを作り上げる上で欠かせないのが、ユーザーが投稿するコンテンツの整理と健全化だ。

しかし、数十億にものぼるユーザーの投稿を人力で管理する、というのは不可能に近い。
そこで使われるのが人工知能だ。

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2013年には社内に人工知能専門の研究チーム「Facebook AI Research(FAIR)」が立ち上がった。このチームでは、これまでに高精度の顔認証システム「DeepFace」や、様々な言語の分類や分析ができる高精度かつ高速の自然言語処理アルゴリズム「fastText」などが作られた。また、ここでも、「儲かるビジネスよりも面白いサービス」という精神が生かされており、FAIRの研究成果は全てオープンソースとして一般に公開されている。

一連の技術によって、暴力や自殺などをほのめかす投稿や、フェイクニュースといったセンシティブなコンテンツをフィルタリングしたり、各ユーザーの好みにあった投稿を優先的にタイムラインのトップに表示する最適化を行うことが容易になった。

さらに、視覚障害者などに向けた写真の読み上げ機能や、気軽に利用できる翻訳機能など、ユーザーの交流を阻む様々な壁を取り除くことにも成功した。

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