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『Detroit: Become Human』のデヴィット・ケイジが語るシンギュラリティとは

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知性を持ったアンドロイドが反乱を起こす、2038年のデトロイト

読者のみなさんは、ゲームを楽しむ習慣はあるだろうか?

私自身はそれほどコアなプレイヤーとは言えないものの、自宅にはPlaystation 4 ProとNintendo Switchがあり、話題作はプレイしてみることが多い。
そんな私が飛びついたのが5/25発売の『Detroit: Become Human』だ。

舞台は2038年のデトロイト。AIとロボティクスの急速な進化によってアンドロイドが一般に普及している世界だ。
人間には危険すぎたり、肉体的にきつい仕事や、裕福な家庭の使用人として働くアンドロイドたちは、新型が出れば買い換えられてしまう。そのうちの一人(一台?)が、その奴隷的な扱いから仲間を開放しようと反乱を起こす。
というのが、ストーリーのおおまかなスジである。

https://www.youtube.com/watch?v=3BzfJwyjkWw

(Video: PlayStation Japan /YouTube)

知性を持ったアンドロイドと人間との違いや葛藤を問う作品はこれまでも名作が多く、フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」と、その映画化作品「ブレード・ランナー」、スタンリー・キューブリックが原案でスティーブン・スピルバーグが監督した「A.I.」の2本はきっとご存知だろう。
その系譜と思ってもらって構わない。

ただ違うのは、その世界が私達にとってはすでに荒唐無稽ではないということだろう。
「ブレード・ランナー」は1982年、「A.I.」も2001年に公開された作品で「遠い未来」のこととして描かれていたが「Detroit: Become Human」は今から20年後の近い未来であり、AIやロボティクスの現状を見ているとたしかにありえる…と感じてしまう世界設定になっているのだ。

 

ゲームプランナー、デイヴィット・ケイジの考えるシンギュラリティ、ロボティクス、そしてAIとは?


(撮影:Yuta Tsukaoka/「THE ESSENTIAL DETROIT: BECOME HUMAN」)

この記事はゲームレビューではないので内容の説明はここまでにして、私が購入した「Detroit: Become Human Premium Edition」に同梱されていた冊子「THE ESSENTIAL DETROIT: BECOME HUMAN」に収録されている、今作の脚本と監督を務めたデイヴィット・ケイジへのインタビューから、この作品を通じて考えるべきシンギュラリティ、ロボティクス、そしてAIについて解説したい。

デイヴィットが今作のストーリーを発想したきっかけの一つが、2007年に発売されたレイ・カーツワイルの話題作「ポスト・ヒューマン誕生」だったという。
2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れることを広く予告した本として非常に有名なので、読んだことのある方も多いだろう。
ここから、人間と人工知能の成長曲線が交わる「シンギュラリティ」について思いを馳せ、いま我々が暮らしている世界と地続きにある未来をストーリー化したのが今作だ。

デイヴィットはインタビューの中でこう語っている。

例えば、起こりうると思ったことの一つに社会の分断が挙げられます。

アンドロイドを買うだけの経済的な余裕がある人はテクノロジー進歩の恩恵を得るけれども、一方で、経済的に厳しい状況に置かれている人たちはアンドロイドを買うこともできず、逆にアンドロイドのせいで仕事が奪われてしまう。

そうなったときにアンドロイドというものが原因で社会というものは二つに分かれると考えられます。

(引用:「THE ESSENTIAL DETROIT: BECOME HUMAN」インタビューより)

いま問題視されているAIによる仕事の代替、そして失業者の増加の影響を先読みしての発言だ。
デイヴィットと彼のチームは、綿密な取材と計算のもとに作品世界である2038年のデトロイトの失業率を「37%」と設定しているという。

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テクノロジーによる世界の分断

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