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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2019.06.04
2019.07.01

ディープラーニングとは?簡単に理解するためのポイントと導入事例を紹介【テクノロジー・AI 入門編】

記事ライター:iedge編集部

AI技術などが注目を集めるようになり、ディープラーニングという言葉を耳にする機会も増えてきました。

ディープラーニングとは、機械が自ら学習していく機械学習の一部を指した言葉です。これからますます関心の高まる機械学習やディープラーニングについて、初心者でもわかりやすく解説しています。

▼この記事でわかる!

  • ディープラーニングができること
  • ディープラーニングの仕組み
  • 活用事例と期待される今後

 

ディープラーニング(深層学習)とは

ディープラーニングのイメージ画像

ディープラーニングとは機械学習の一種で、データを分析したり、学習する過程を強化した機能です。ディープラーニングはPythonなどのプログラミング言語を用いて実装されることが多く、AI分野の要となる技術として研究が進められています。

Pythonが使われる背景にはnumpyと呼ばれるライブラリが関係しているのですが、numpyは高速で数値を処理できる機能です。これにより、ディープラーニングは高度な計算を素早く可能にする機能として、AI技術などに転用されています。

 

ディープラーニングの仕組み

ビジネスマンとディープラーニングのイメージ画像

IT技術のひとつであるディープラーニングですが、実は人間の脳がモデルとなっているのです。ディープラーニングは機械に知能をもたらすために応用された技術で、主なはたらきは概念と概念の結合度を変化させられることにあります。

チャットボットの技術を例に挙げましょう。
これまでは特定のKWに対してプログラミングされた返答を返していたチャットボットですが、このような手動の命令方法では「りんご」というワードに対して「美味しい」「赤い」などの返答を返すことしか出来ませんでした。

しかし、ディープラーニングによって「りんご」への返答を自ら学習し、最適解を導き出すことが可能になったのです。逐一「りんご」への返答をプログラミングしなければならなかった従来に比べて、ディープラーニングの手法を用いたチャットボットは自ら学習して返答を変化させていきます。

「りんご」に対して、始めは「赤い」しか返せなかったとしても、情報を与えることで次第に「美味しい」「赤いほうが美味しい」などの返答を返すようになるのです。

これは人間の脳と同じように、シナプスの結合度が変化した結果といえるでしょう。情報が伝達しやすいようにシナプスの結合度を変化させる機能をニューラルネットワークと呼びます。

Pythonなどのプログラミング言語がもっている、高速な数的処理の恩恵を受けて開発された情報伝達回路が、人間の脳をモデルとしたニューラルネットワークなのです。
 

ディープラーニングの学習方法

ロボットの手がアルファベットを書く様子

ディープラーニングを運用するには学習の過程が必須です。

学習のもととなるデータを用意し、機械学習アルゴリズムと呼ばれる処理を行うことで初期学習を開始します。機械学習アルゴリズムについては、機械学習に特化した計算方法の束だと考えておきましょう。

「りんご」というデータに対して機械学習アルゴリズムを行うことで、最適な返答を導き出していきます。これまでは『「りんご」には「赤い」「美味しい」と返す』と返答をひとつひとつプログラミングしなくてはいけませんでしたが、機械学習アルゴリズムによってこの手間がなくなりました。

「りんご」が持つ情報をもとに、同様のデータに対しても同様の返答を返せるようになったり、機械が自ら状況を把握して臨機応変な返答を返すことが可能になっています。

以下に主な学習方法を紹介しましょう。

  • 識別
  • 予測
  • 教師あり/教師なし学習
  • 強化学習

それぞれ異なる特徴を持っており、どのような運用をするのかによって学習方法を使い分けることが肝心です。
 

ディープラーニングにおける画像認識の原理

風景を画像認識する様子

ディープラーニングによって、機械が画像を認識し、分類できるようになったことはご存知でしょうか。たとえば犬と猫の画像を数枚処理させると、猫と犬に分類できるのです。こうした問題を「分類問題」と呼びます。

人間が犬と猫を分類する際には、以下のフェーズを踏むことになります。

  1. 目の前にいる犬か猫かわからない生き物を見る
  2. 脳内の犬、猫に関する情報と照合する
  3. 犬か猫か判断する

2のフェーズで行われていることをさらに細かく見てみましょう。

  • 自分が持つ犬や猫のイメージを特徴として処理しやすく変換する
  • 目の前にいる生き物の視覚情報を特徴として処理しやすく変換する
  • 特徴と特徴を照らし合わせて、犬か猫か判断する

つまりあらかじめ「犬はこうである」「猫はこうである」という情報が必要です。

生まれてから今まで黒猫しか見てこなかった人に白猫を見せても、いきなり「猫だ」とは理解できないでしょう。さまざまなパターンの「猫」を認識させることで、どんどん性格に猫という生き物を理解できるのです。

これと同じことを機械に覚えさせることで、機械も人間と同じように犬と猫を認識し、識別できるようになります。

事前学習の方法としては、犬と猫の画像を何度も読み込ませ、識別を繰り返し行うのです。正解の場合は正解を与え、不正解の場合は不正解というフィードバックを返すことで、機械は犬と猫のボーダーラインを明確に引けるようになっていきます。

犬、猫など正解と不正解が明確に分けられる問題であれば単純ですが、10年後の未来は今より良くなっているか、といった曖昧な問題に対しては、さらに明確なボーダーを用意しなければなりません。

景気の動向予測などはまさにその分野で、人間が事前に特徴量を定めなくてはうまく機能しないのです。

これは先ほど紹介した教師あり学習に分類されます。

 

ディープラーニングと人工知能の関係

AIのイメージ画像

ディープラーニングの機能は人工知能(AI)にも転用されています。人工知能とは、機械に知能を授ける技術として近年注目を集めるITの分野です。知能をどう捉えるかにもよりますが、大きく分けると人工知能には「強いAI」と「弱いAI」が存在します。

強いAIとは機械学習を可能とした人間と大差ない「考えられるAI」のことです。未だ強いAIは完成に至っていませんが、ディープラーニングの技術がさらに進展すればいずれ実現できると考えられています。

現在はディープラーニングの技術を応用して、チャットボットなどの分野でAIの開発が進められている状況です。
 

ディープラーニングと機械学習の違い

ディープラーニングと機械学習を混同する方も少なくありません。大きなくくりでいう機械学習の中にディープラーニングが存在するのが正しい認識です。

機械学習によって、機械は分類と回帰と呼ばれる2つの法則を用いながら物事を判断していきます。分類とはすでにあるデータを右、左に振り分けていく問題のこと。回帰とはこれまでのデータの蓄積から特徴を見出し、未来のことを判断する問題のことです。分類は演繹、回帰は帰納と考えるとわかりやすいでしょう。

ディープラーニングは分類や回帰では処理しきれない問題に対して用いる学習方法です。正解のデータを「教師データ」と捉え、現在自分が返したデータと教師データのあいだにある誤差に着目し、誤差が小さい方が正解に近いと判断していきます。誤差が小さいものを最適解と捉え、最適化を繰り返すのがディープラーニングです。

最適化するための方法にはさまざまな手法があります。主な方法は「フォワード・プロパゲーション」や「バックプロパゲーション」と呼ばれるものです。

さきほど紹介した誤差に着目して最適化を行う方法は「バックプロパゲーション」にあたります。

 

ディープラーニングが注目され続ける理由

ディープラーニングが注目されるのは、今なお研究が盛んに進められているテーマであり、これからさらに発展すると予測されているからでしょう。
応用できる分野は多岐にわたりますが、現状はまだ一部の企業やサービスに転用されているに過ぎません

ディープラーニングの真髄は機械が自ら学習する自律性にあります。過去の事例や膨大なデータから特徴を見出し、法則性を自ら学習する自律性を備えたディープラーニングの技術を用いれば、専門的なITの知識を持っていない方であっても簡単にIoTやRPAの恩恵を受けることができます。

こうした実用性の高さこそ、ディープラーニングが今なお注目され続けている理由でしょう。

海外だけでなく国内でも研究・実用化に成功している企業は存在します。

ここからは2019年現在、ディープラーニングが応用されている事例を紹介しましょう。
まずは日本国内の事例から見ていきます。
 

ディープラーニングの応用事例【日本国内】

オフィスビルが並ぶ様子

みずほ証券:AI株式売買システム

金融業界の中でもAI技術を素早く導入したのは、日本を牽引する大手金融会社のみずほ証券でした。

紹介したディープラーニングの帰納を用いて、株価の上昇や下落を的確に予想するサービスとして、機関投資家向けにAI投資を提供しています。

もともと株式投資の世界ではファンダメンタルとテクニカルという2つの投資手法が存在し、ファンダメンタルは国や企業の経済状況や世界情勢などから株価への影響を予測し、値上がりと値下がりを予想する手法でした。

テクニカルとは、これまでの株価の動きをデータ化し、帰納思考を用いて今後の値動きを予測する手法だったのです。みずほ証券が導入したAI投資はまさに株式投資におけるテクニカルの分野といえるでしょう。

ディープラーニングの長所を発揮しやすい株式投資の分野で、これからどのように発展していくのか期待が高まります。

スーパーセンター「トライアル」:画像認識システム

小売業界でもディープラーニングの技術を応用した業務効率化の事例が散見されています。中でも興味深いのはトライアルホールディングスが取り組んでいる「欠品管理システム」です。

これまでは欠品管理を人の目で行っていましたが、トライアルHDはディープラーニングの画像認識を利用してカメラで欠品管理を行うように改善しました。

スマートカメラを店内中に配置し、商品棚を画像認識で管理。これまで通常業務の一つだった欠品管理の時間がなくなり、人員削減に成功しています。ある店舗では発注も自動で行うシステムを導入しているため、いつでも精度の高い発注が実現できました。

ITとはかけ離れた小売業でもディープラーニングの成功事例が出てくるなど、ディープラーニングの技術革新にはさらなる期待がかけられています。

パルコ:ディープラーニングによる顧客分析

日本国内に点在する百貨店「パルコ」は、これまで個々のテナントに介入することを避けて経営を続けてきました。集客や広告などはテナントや店舗に任せるスタンスを取っていましたが、2013年には「24時間パルコ」と銘打った施策を打ち出します。

顧客との関係性(CR)を向上し、リピート率や顧客満足度をアップさせるのが狙いのこの施策の目玉はスマホアプリ「ポケットパルコ」やショップブログです。ポケットパルコでは、アプリをDLした顧客に対してポイントを付与したり、クーポンを配布することで来客数を増加させる狙いがありました。

また、ショップブログを展開することでコンテンツマーケティングを行ったのです。

しかし、こうしたサービスはすでに多くの小売店やBtoCの企業で行われていました。パルコが次に取り組んだのはディープラーニングの技術を用いて顧客へ働きかけるレコメンド機能の搭載です。

顧客データを分析し、それぞれの顧客が持っている嗜好に合わせて適したタイミングで商品のおすすめを行ったりブログ記事の紹介を行うことで、来店前と来店後の顧客の心をつかむことに成功しました。

こうしたビッグデータの活用はAmazonの「おすすめ商品」やYoutubeの「おすすめ動画」機能にも用いられており、顧客の興味を惹く上で重要な要素として注目を集めています。

ディープラーニングが得意とする法則化を上手く用いた事例といえるでしょう。

ベイシア:スーパーのレジ待ちを防止するディープラーニング活用事例

老舗の通信機器メーカー沖電気が開発した店舗業務改善支援ソリューションVisIoTを導入したのは関東、東海に複数店舗を置くスーパーマーケット「ベイシア」です。

現在、スーパーの競合となっているのはライバル企業のスーパーだけではありません。レジ待ちの時間を嫌がってコンビニへ足を運ぶ顧客も多いため、コンビニもスーパーのライバルとなっています。

スーパーは食料品や日用品などを数多く取り揃えているため、レジ待ちの時間が長くなりがりです。その時間を嫌ってコンビニへ足を運ぶ顧客も少なくありません。

レジ待ち時間を解消するために、ベイシアでは「司令塔」となるベテラン店員を配置していました。レジが混雑するタイミングで応援を呼ぶ役目を担っていましたが、目測を誤ることがあったり応援が駆けつけるまでにタイムラグがあったりするため、レジの混雑を解消するには不完全です。

そこでベイシアはVisIoTを導入。VisIoTは店内の監視カメラと連動した画像認識システムで、レジ前の混雑をAIが把握して自動的にレジ応援を要請します。タイムラグが解消され、司令塔として店員を配置する必要もなくなったため、人員削減につながりました。

結果的にコスト削減と顧客満足度の増大に寄与しています。
 

ディープラーニングの応用事例【海外】

Amazon:ロボティクス・チャレンジ

世界的企業のAmazonが取り組んでいる流通の自動化ロボットコンテスト「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」には、ディープラーニングの技術を応用したロボットが多数出場。

現在では名前が変わり、ロボティクス・チャレンジと呼ばれていますが、個人や企業が開発した技術の結晶であるロボットがお披露目され注目を集めています。

倉庫業の要であるピッキングは、膨大な倉庫の中から指定された品物を素早く、丁寧に取り出す技術が求められる分野です。ロボティクス・チャレンジを発端として、これまでは倉庫業のベテランに委ねられていたピッキングを自動化するために「DeepLens」と呼ばれるビデオカメラが発売されました。

ディープラーニングの技術を利用して、画像認識機能を搭載したDeepLens。倉庫業のイノベーションに寄与する新技術として期待が高まっています。

IBM:ワトソン

世界的IT企業のIBMは2008年にワトソンと呼ばれる人工知能を発表しました。ワトソンの発表からAI技術の改良を重ね、2017年には「PowerAI」を開発・発表するに至ったのです。

AIをイチから開発するのは膨大な時間とコストがかかる作業ですが、PowerAIを用いれば導入したいポイントに合わせてカスタマイズするだけで簡単にAIを導入できます。

2018年には機械学習の学習を支援する「Watson Studio」を発表。日本の日立製作所と協働しながら、機械学習の訓練モデルを作るためのサービスとして販売を開始しています。
 

ディープラーニングの現状とこれから

ディープラーニングのイメージ画像

ディープラーニングは機械学習のなかでも注目を集めている研究分野のひとつです。

あらゆる業種、職種を効率化する可能性を秘めており、さまざまな企業や研究機関が費用や人材を投入して研究していますので、今後さらなる発展が見込まれています。

実用化されている技術を見ても、すでに業務効率化のための機能を搭載した機器が数多く発表されています。

AIや機械学習に興味がある方は、今から学習を始めておくと生活や仕事において将来的なメリットがあるかもしれません。

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