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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2018.11.26
2019.12.25

アメリカは「AI記者」が第一線で働いている!このニュースで考えるべきこと

記事ライター:Yuta Tsukaoka

記者の大量失業時代?

タイプライターで何かを執筆しているロボット

私の仕事であり趣味でもある毎日のルーティンに「ニュースサイトの巡回」がある。RSSリーダーで数百のメディアをざっと見回し、日経新聞、朝日新聞、読売新聞などの新聞社サイトを見て、最後にGoogleニュースも見る。(余談だが、GoogleニュースのAIによるニュースアグリゲーションはなかなか良く、記事にしたこともある)

その中で、ひときわ「他人事じゃない」ニュースがあった。NHK NEWS WEBが掲載したAI記者の記事である。タイトルは「来るのか?! 記者の大量失業時代(NHK NEWS WEBの記事へ移動します)」。

私も記事を執筆して生計を立てている身だ。大量失業時代と言われて、無関係だと思っていられるほど楽天的ではない。この記事から、AIが記事を執筆する可能性、そして人間の記者が何をすべきなのかを考えたい。ひいては、AIと人間とが共存する未来が見えてくるはずだ。

 

AP通信とロイター通信ではすでに「第一線」

マイクを片手に取材している記者

記事は、担当記者がAP通信とロイター通信でAIによる執筆の現場を見学したところから始まる。

AP通信とロイター通信といえば、世界的な通信社である。通信社とはいわば、新聞を発行していない新聞社や、チャンネルを開設していないテレビ局のようなもので、世界各地のニュースを取材して記事や動画をメディア各社に販売している。新聞記事に「AP」とか「ロイター通信より」とか書かれているのが、購入された記事だ。

日本国内の通信社では共同通信が有名だろう。名前を聞いたことがあるのではないだろうか。つまり、通信社は新聞やテレビ局と同じか、それ以上のスピードでニュースを発信しなくては意味がない。とにかくスピード勝負なのだ。

そんな現場で、AI記者が活躍しているという。しかも、第一線で。

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AIが記事を書くには30秒で十分?

 

定型ニュースはお任せでOK

メガネにPC画面が反射している様子

記事にはいくつかのタイプがあるが、新人の記者が最初に任されるのが株価やスポーツの結果を伝える「定型記事」だ。APとロイターはこれをすでにAIが書いているのだという。

たとえば、A社の株価が急落したというニュースがあったとする。記事にするなら「A社の株が○○%下落しました」というのがもっともシンプル。さらに「この下落幅は○年○月以来の水準だ」などと続けるとより親切なのだが、この親切な記事をAIが書いているらしい。しかも、10秒から30秒で。

NHKの記者は「私なら過去のデータの確認も含めて10〜30分はかかる…」と書いているが、そのとおり。過去のデータを参照するのに数分、さらに上長(デスク)のOKをもらうのに数分以上はかかるだろう。

それが、AI記者であればデータの参照を間違えることはないのでデスクによる確認が不要な分、早く記事を出せる。しかも正確に。通信社がAI記者をほしがるわけである。

しかも、ロイターでは「トレーサー」というシステムを開発し、Twitterなどからニュースをいち早くキャッチして信憑性スコアとともに記者へ情報を送っているそうだ。いよいよ、記者の仕事がなくなる未来が現実味を帯びてくる。

 

データの整備を考えると気が遠くなる

お札が大量に積み重なっている様子

とはいえ、だ。
AIに関心のある読者なら私と同じ気持ちだろう。このAI記者が記事を書けるようになるまで、どれほどの時間をかけてデータを整備したのだろうか。

先ほど例にとったような記事を書くには、AIが理解できるフォーマットで株価情報を過去数十年分、整備しておく必要がある。スポーツの結果や天気情報も同じくである。その上、リアルタイムで情報を取得し続け、そのフォーマットに格納し続けなくてはならない。

はじめに作ってしまえばあとは楽なのだが、おそらく数億円以上の規模で初期投資が必要なはずで、これを導入できる企業は多くないだろう。また、メンテナンスもばかにならない。

このAIが進化して、いわゆる「オピニオン」や「コラム」「論評」なんかも書けるようになるとすれば、AIを導入できるメディア企業だけが生き残り、そして、そこにはシステム部だけが残ってしまうのだろうか?

 

記者の仕事は「創造」になる

握手をするロボットと人間

そんな疑問について、NHKの記事では「記者の仕事は創造になる」と答えている。つまり、データを参照する定型記事はAIに任せ、記者は未来を予測するような考察やコラムなどを担当することになるという。

たしかに、今現在はAIがそういった ――我々が人間的と呼ぶような作業をできるようになる未来は見えていない。であれば、通信社のように資金が豊富でAI を持っている企業から正確で素早いニュースを買い、記者はそこへ考察を加えるという分担ができるだろう。

この、AIと人間が作業を分担するという考え方がこれからの主流になるのは間違いないと私は考えている。記者に限らず、あらゆる分野で。

仕事を「奪われる」のではなく「分け合う」のだ。成果物が同じであれば、人間は少ない労働時間でこれまでと同等の賃金を得ることができるだろう。この考え方には否定的な意見も多いが、今のままでは本当に人間の仕事はなくなってしまう。

望むと望まざるとにか関わらず、AIが進化して担当できる仕事が増えるごとに、個別の経営的判断としてリプレイスされ、いつかはすべての仕事がAIにとってかわられるだろう。

するとどうなるか。いつか、人間にはなすべきことがなくなってしまう。そのような過剰な進化に歯止めをかけ「協力関係」が築けるAIを持つべきだろう。

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