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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2018.12.03
2019.12.25

アクセルラボのホームオートメーションAI「CASPAR」は何を感じているのか?

記事ライター:Yuta Tsukaoka

前回の記事で、CEATECのアクセルラボブースを紹介し「目を持った家」についてプライバシー面を中心に解説した。

今回はCASPARの設計思想、基本的な動作アルゴリズムなどを中心に解説する。

前回の記事でも書いたように、アクセルラボはこのメディア「iedge」のオーナーだ。それでも私としては正直に思ったことを書いていこうと思うし、実際、かなり悪くない出来 ――言ってしまえば「ほとんど未来」と言っていいモノに仕上がっていると思う。

スーパーセンサーによるホームセンシング

CASPARの3つのレイヤー解説図

CASPARは3つのレイヤーで構成されている。
コネクト(センシング・情報収集)、AI(深層学習・分析)、UX(ユーザーエクスペリエンス・実行)である。

このうち、コネクトのレイヤーで使われているのが、スーパーセンサーだ。「スーパー」などと名前がついていると安っぽいようだが、その実情を知れば確かにスーパーであることが分かる。

スーパーセンサー

これがその実物である。壁面埋込み型で、ここに「音声」「照度」「紫外線」「動作」「ビジュアル」「振動」「温度」「湿度」のセンサーと、CASPARのUI ――つまり、声を出すスピーカーが組み込まれている。

特に重要なのが、音声とビジュアル、振動である。

音声は単にAIスピーカーへの呼びかけを聞き取るだけではなく、生活音も聞いている。たとえば、コップを出した音、薬瓶を空けた音、冷蔵庫を閉めた音… それらの情報と、ビジュアルセンサーからの映像情報、そして振動による住人の移動検知を組み合わせて、AIのレイヤーで「いま、住人はどこで何をやっているのか」を検出するのだ。

私はこれまでの記事でしつこく、AIスピーカーは「目」を持つべきと主張してきたが、ホームオートメーションを実現するにはそれだけでは不十分である。

AIスピーカーのように「指示」と「動作」が一対になっているなら「どこから呼びかけられたのか」を知るだけで正確な動作ができるが、ホームオートメーションでは「指示なし」で動作することが求められるからだ。

そこでCASPARが取り入れたのが、上記のセンサー群である。

指示なしでの動作を実現するためには、まさしく人間を超えた感知機能が必要になるのだ。それをすべて取り込んだこれは、まさに「スーパーセンサー」と名乗るにふさわしいのではないだろうか?

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スーパーセンサーが感知する1TBの情報

 

スーパーセンサーから送られる1TBもの情報を解析するAI

続いて、そのスーパーセンサーから送られてくる情報を解析するAIについてだ。

CASPARのtech view

5つに分割された画面のうち、下段の3つがAIによってリアルタイムに分析されて生成された映像である。

下段は左から、住人が今いる位置の予測情報、骨格や家具の形を抽出した映像、そしてアクティビティ検出となっている。見てほしいのは右下の「アクティビティ検出」で、これがまさにCASPARの真骨頂だ。

このグラフは「確信率」―― つまり、分析から導いた予測の確かさを表している。よく見ると「sitting on sofa(ソファに座っている)」と「living activity(リビングにいる)」「reading(何かを読んでいる)」の3つが突出していて、わずかに「watching tv(テレビを見ている)」も反応しているのがわかるだろう。

「テレビは消えているから可能性は低いがもしかしたら」という低い確信率と、それ以外の高い確信率の差分によって、AIがどう分析しているのかがよくわかる。

AI(深層学習分析)のイメージ画

CEATECで行われた同社代表 小暮氏の講演によると、これらの解析に使われるスーパーセンサーから送られる情報は1日で1TB、解析情報のパターンは3200億にもなり、それらを毎秒リアルタイムで解析しているのだという。

しかも、それらの解析はすべて、住宅内に設置されたローカルのコンピュータで行われる。オンラインになっているのは解析アルゴリズムのアップデートだけだ。

 

CASPARの「目」はこれからもっと良くなる

小暮氏の講演では、CASPARがこれから獲得する新たな機能についても触れられていた。それが「顔認証」である。

つまり「住人がどこにいて何をしているか」ではなく「家族のなかの誰が、どこでなにをしているか」を解析できるようになるのだ。

CASPARが見ている映像とAIによって分析された解析図

それによって何が起こるかというと、たとえば料理中の母親がキッチンから離れている間に子どもが加熱中の鍋に近づくと警告が発せられたり(上記写真がその場面だ)、庭に知らない人物が侵入するとアラートが鳴ったりということができるようになるという。

また、個々人の好みも分けて覚えることができるようになる。

父親、母親、娘、息子、それぞれ違う朝のルーチンを持っていてもそれらにきちんと対応したサポートを自動で行うことが可能になるのだそうだ。

ここまで来ると、もはや「自動化された家」というだけではない、「考える家」という質を手に入れることができると言っていいだろう。

 

最後に:私からの今後の提案と懸念

ここまで読んで、さすがに褒め過ぎでは?と思っている読者もいるだろう。私もそう思っているが、事実として素晴らしいソリューションであることは間違いない。

それでも最後に、私からささやかな提案と懸念点を添えて、次回以降の記事につながる伏線を張っておきたい。

まず提案だが、1980年代生まれでロボットに夢見てきた私としてはUIにロボットを採用してほしい。Pepperのように歩き回る必要があるかどうかは別として、ここまで生活に寄り添ってくれる存在なのであれば愛着を持てる顔がほしいところだ。

マーヴィンのイラスト

見た目は「銀河ヒッチハイクガイド」のマーヴィンか、「スターウォーズ」のR2-D2だと嬉しい。壁面埋め込みなので「2001年宇宙の旅」のHAL9000は似ているのだが、あれが家の中にいるのはぞっとしないだろう。ぜひ考えてみてほしいと思っている。

そして懸念点はハードウェアのアップデートに対応できるかどうか、だ。スーパーセンサーが壁面埋め込みであることから分かるように、これらの機能はすべて住宅の設計段階から計画されて埋め込まれている。

となると、日々進化するハードウェアの波にのるのは容易ではないだろうから、中銀カプセルタワービルのような「未来遺産」にならないかが不安ではある。

最先端の家を建てたつもりが、住み始めて数年で時代遅れになってはたまらないだろう。しかし、深センとシリコンバレーが牽引するハードウェアの進化はそれほどのスピードであるのが事実だ。

この提案と懸念については別途取材をし、記事にしたいと思っている。

私はひとまず、CASPAR付きの家が買えるくらい稼ぐ方法を考えるとしよう。

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