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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2018.09.20
2019.12.26

視聴傾向ではなくTwitterから解析した「嗜好データ」で映画をおすすめする「TSUTAYA AI」の戦略とは

記事ライター:Yuta Tsukaoka

Netflixに対抗か? より幅広いデータから映画をおすすめ

並んで座っている複数人の男女

最後にレンタルDVDを借りたのはいつだろう。私に限って言えば、もはや思い出せないほど昔だ。今、財布にはTポイントカードの指定席さえない。読者の中にも、そういう人は多いのではないだろうか?

私は、Netflixを始めとしてhulu、Amazon Primeにも加入しているので「映画が見たい」と思ったとき、その欲求が自宅テレビで満たされないということがほとんどない。

サブスクリプションサービスに数千本、加えてAmazonビデオやGoogle Playでレンタル・購入可能な作品も含めれば、さほど映画通ではない私の欲求はほとんど網羅してしまうのだ。私のような環境にある人はおそらく珍しくもなく、世の中にあふれるほどいるだろう。

そんな中で苦境に立たされているのが、TSUTAYAである。そのTSUTAYAが今、ちょっと変わり種のプロモーションを打っている。それが、AIによる映画レコメンドサービスの「TSUTAYA AI」である。

AIによる映像作品レコメンドについては、Netflixが採用してきた評価制度の変遷とともに記事にしたことがある。

毎日数百万、数千万と集まるユーザーの視聴データをバックグラウンドに、それぞれのユーザーに対して「マッチ度」という数値でおすすめ作品を紹介してくれる仕組みなのだが、TSUTAYA AIは明確にそこへ対抗しているように見える。

スマートフォンを操作している男性

というのも、TSUTAYA AIは視聴データではなく(そんなもの持っていないのだから当然だ)、Twitterのつぶやきから「趣味嗜好データ」を解析して作品をレコメンドしてくれるのである。

運営元のカルチュア・コンビニエンス・クラブのリリースには以下のような文章がある。

若者言葉や、顔文字・絵文字も含めた72万種類の単語(広辞苑は約24万単語を収録)を認識することができるほか、機械学習によってそれぞれの単語が持つ「意味」を、単語と文章の持つ意味合いの両方から正しく認識することができます。

どれほど「正しく認識」しているのかはブラックボックスの中だが、試みとしては非常に面白い。

Netflixが利用している視聴データは、あくまでも自社サービス内における視聴履歴によって生成されるものなのでサービスに加入したばかりの人には機能しない。サービス利用前であればもちろんのことである。この盲点を上手く突いたプロモーションと言えるだろう。

ちなみに、私にレコメンドされた20作品のうち、執筆時点でサブスクリプションで観られるものが6本、有料でオンライン視聴できるものが3本あった。半分以上はTSUTAYAのサービスを利用しなければ観ることができないという念の入れようである。

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趣味嗜好の解析はビッグビジネス

 

趣味嗜好の解析はビッグビジネス

一箇所に大量の情報が詰められている様子

趣味嗜好という、その本人ですら言語化していない情報の解析はビッグビジネスにつながる。代表的なところでは広告だろう。

GoogleもFacebookも、検索や投稿の傾向からユーザーの趣味嗜好を分析し、興味のある広告を表示させようと躍起になっている。

また、オンラインに限らず実店舗での利用もありえる。いま、日本では各社が力業としか言いようのないプロモーション攻勢でスマホ決済の導入を推進しているが、これは購買データからより「カネに近い趣味嗜好」のデータを得ようとしているにほかならない。

たとえば日本ではLINEがスマホ決済の覇者の座に手をかけているが、位置情報と組み合わせたリアルタイムでパーソナライズされた広告がLINEでプッシュ通知ができるとなれば、広告費の多くがそちらへ流れるだろう。

話をTSUTAYAに戻せば、運営元のカルチュア・コンビニエンス・クラブは「レンタルビデオ屋」ではなく「データ屋」である。コンビニの買い物にTポイントがつくのは、私たちからデータを買った代金そのものだ。

今回の取り組みで機械学習に投じられた金額は大きなものになっているはずだが、TSUTAYAを中心としたTポイントカードでのデータ収集に陰りが見えている今、つぎの一歩として「自然文からの高精度な趣味嗜好解析」は悪い投資ではないのだろう。

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